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名古屋地方裁判所 昭和62年(ワ)2236号 判決 1988年9月30日

原告

大日運輸株式会社

被告

大江治仁

主文

一  被告は、原告に対し、金九二二万三七六九円及び内金八三七万三七六九円に対する昭和六二年五月三日以降支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生(以下「本件事故」という。)

(一) 日時 昭和六二年五月二日午前一時四五分頃

(二) 場所 静岡県庵原郡由比町寺尾五五二番地の一の一由比バイパス交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 加害車両 多摩四四わ四五二二号普通貨物自動車(以下「被告車」という。)

右運転者 被告

(四) 被害車両 名古屋一一く八三三九号大型貨物自動車(以下「原告車」という。)

右所有者 原告

右運転者 訴外山中勝利(以下「訴外山中」という。)

(五) 態様 被告が赤信号を無視して本件交差点に進入したため、折から交差道路を青信号に従つて走行していた原告車に衝突し、原告車が大破した。

2  責任原因

本件事故は、被告の信号無視の過失によつて発生したものであるから、被告は、民法七〇九条により、本件事故による損害を賠償する責任がある。

3  原告の損害

(一) 車両損 五二五万円

原告車は、本件事故により大破し、経済的に全損となつたので、本件事故当時の時価相当の五二五万円が損害である。

(二) 積荷に関する損害 二三七万七四八三円

原告車は、本件事故当時、サントリー缶ジユースを満載(一二〇〇ケース、一ケース二四本入)して運搬中であつたが、本件事故により転倒し、積荷も荷崩れして落下などしており、ジユースという食品であるため、安全性の点から全て廃棄を余儀なくされ、また、その後片づけなどのため、原告には左のとおりの損害が発生した。

(1) 積荷積替費 三万円

積荷の原告車から応援車(代車)への積替えに要した人件費

(2) 応援車(代車)料 六万円

名古屋から応援車を出して積荷の運搬をした台車料

(3) 積荷荷おろし費 二万円

積荷をサントリー株式会社の指定した場所への荷おろしに要した人件費

(4) 事故現場積荷残処理費 四万〇八〇〇円

事故現場に散乱したジユース缶の処理費

(5) 積荷損害 二二二万六六八三円

積荷の缶ジユース全部が廃棄処分となつたための損害であるが、運送人である原告は、荷主に対し賠償義務を負つているものである。

(三) 原告車の休車損害 七四万六二八六円

原告車は、本件事故により全損となつたので、原告は、修理をあきらめ、新車を購入することとしたが、新車が納入され実際に稼働するようになるまで、事故当日から六月六日までのうち二九日間、原告は、次のとおり、休車による損害を被つた。

原告車の実働一日当たりの利益は二万五七三四円であり、休車期間二九日分合計七四万六二八六円が損害である。

(四) 弁護士費用 八五万円

原告は、被告が任意の支払に応じないので、原告代理人に本訴を委任したものであり、その弁護士費用として八五万円の損害を被つた。

よつて、原告は、被告に対し、右合計九二二万三七六九円及び弁護士費用を除いた八三七万三七六九円に対する事故日の翌日である昭和六二年五月三日以降支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1のうち(一)、(二)の各事実は認め、(三)ないし(五)の各事実は否認する。

本件事故当時、被告車の進行方向の信号機は青であつた。

2  同2は否認する。

3  同3は不知。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1(交通事故の発生)について

1  請求原因1のうち(一)、(二)の各事実については、当事者間に争いがない。

2  いずれも成立に争いのない甲第一号証及び第四号証によれば、原告車は原告の所有に属し、これを本件事故当時、訴外山中が運転していたこと及び被告車を被告が運転していたことを認めることができる。

3  また、いずれも成立に争いのない甲第一号証、第一一号証、第一二号証、証人山中勝利及び同塩谷修の各証言並びに被告本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)を総合すれば、次の事実が認められる。

(一)  訴外山中は、昭和六二年五月二日午前一時四五分頃、原告車を運転し、清水市方面から富士市方面に向けて由比バイパス上り線を進行し、静岡県庵原郡由比町寺尾五五二番地の一の一、由比バイパス交差点(本件交差点)を通過しようとしていた。

(二)  一方、被告は、同じ頃、被告車を運転し、旧国道一号線から本件交差点に進入し、由比バイパス下り線に入ろうとした。

(三)  本件交差点には信号機が設置されており、交通整理が行われていたところ、原告車は青信号に従つて走行したが、被告車は自己の従うべき対面信号機が赤であるのに、これを見落として本件交差点に進入したため、両車が衝突して、本件事故が発生した。

(四)  原告車は、本件事故により大破した。

4  被告は、本件交差点における自己の進行方向の対面信号機が青であつた旨主張し、被告本人の供述中には右主張に沿う部分がある。しかし、いずれも成立に争いのない甲第一一号証及び第一三号証によれば、事故当日実施された実況見分の際、被告は、自分の見た青信号が、由比バイパス下り線の走行車両用の対面信号機のそれか、被告車の進行方向の対面信号機のそれか、特定することはできなかつたこと、また、同日、被告は、原告に対し、自分が原告車の進行方向の対面信号機と見まちがえた可能性が強い旨自認する書面を差し入れていることが認められる。

しかも、被告本人の供述にはあいまいな点が多く、右事実及び証人山中勝利の証言に照らして、被告本人の前記供述部分は措信することができない。

二  請求原因2(責任原因)について

右一3で認定した事実によれば、本件事故は被告の信号無視の過失によつて発生したものと認められるから、被告は、民法七〇九条により、本件事故による損害を賠償する責任を負うものといわざるをえない。

三  請求原因3(原告の損害)について

1  車両損 五二五万円

証人塩谷修の証言によりいずれも真正に成立したものと認められる甲第五号証の一ないし六、第六号証、第七号証及び同証言によれば、原告車は本件事故により全損となつたこと、同車の本件事故当時の時価は五二五万円であること、したがつて、原告は同額の損害を被つたことが認められ、他に右認定に反する証拠はない。

2  積荷に関する損害 二三七万七四八三円

証人塩谷修の証言によりいずれも真正に成立したものと認められる甲第八号証の一、二、第九号証の一ないし三及び同証言によれば、本件事故により原告車の積荷であつたサントリー缶ジユースが荷崩れして落下などし、これにより原告は次のような損害を被つたものと認めることができる。

(一)  積荷積替費 三万円

積荷の原告車から応援車(代車)への積替えの人件費として三万円を要した。

(二)  応援車(代車)料 六万円

名古屋から応援車を出して積荷の運搬をした代車料として六万円を要した。

(三)  積荷荷おろし費 二万円

積荷をサントリー株式会社の指定した場所へ荷おろしの人件費として二万円を要した。

(四)  事故現場積荷残処理費 四万〇八〇〇円

事故現場に散乱したジユース缶の処理費として四万〇八〇〇円を要した。

(五)  積荷損害 二二二万六六八三円

積荷の缶ジユース全部が廃棄処分となつたため、運送人である原告が荷主に対して合計二二二万六六八三の損害賠償をせざるを得なくなつた。

3  原告車の休車損害 七四万六二八六円

証人塩谷修の証言によりいずれも真正に成立したものと認められる甲第一〇号証、第一四号証、第一五号証及び同証言並びに弁論の全趣旨によれば、原告車が本件事故により全損となり、これに代わる新車が納入され実際に稼働するようになるまで、原告は、事故当日から六月六日までのうち二九日間休車による損害を被つたこと、原告車の実働一日当たりの利益は二万五七三四円であること、したがつて、右二九日分合計七四万六二八六円の損害が発生したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

4  弁護士費用 八五万円

本件訴訟の難易、審理経過、認容額その他諸般の事情に照らし、弁護士費用八五万円を本件事故と相当因果関係ある損害と認めることができる。

5  合計 九二二万三七六九円

四  結論

以上の事実によれば、本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 芝田俊文)

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